国際公的統計研究・研修センター(Hi-CEM)
日本の公的統計部門は、分散型制度で統計作成実務を行っている。同制度のメリットは大きい一方、多くの課題があることも指摘されてきた。その一つとして、統計作成の実務家が各府省で統計作成実務にあたっているために、統計専門家が育成されにくいといった問題がある。そのような中で、公的統計を担う専門家を育成し、国内外の公的統計の利用者から信頼される統計を作成していくことが重要であることは言うまでもない。公的統計の利用者が国内だけにとどまるものではないことから、国際機関は、公的統計が国際比較可能となるように、各国の統計の品質管理をしていくために、様々な「統計作成指針」を作成し、各国に示してきた。そのような意味では、統計専門家は、国際水準の知識水準が要求されていると言ってもよい。
また、アジアに目を向ければ、急速に経済が成長していく過程の中で、公的統計の整備・改善が各国で取り組まれようとしている。このような環境を踏まえると、長年に渡る公的統計作成を行い、多くの知見が蓄積されている日本は、アジア諸国の統計整備にも貢献していくことが期待されていると言ってよいだろう。
一橋大学は、1875年の創立以来、公的統計の整備に、継続して貢献してきた(文末参照)。この10年に限定しても、国際機関で消費者物価指数や国民経済計算、不動産・建設価格統計の統計作成指針の作成をリードしてきた研究者らと共同研究を実施するだけでなく、国内の公的統計にかかわる研究者らと合同で、国際公開ワークショップなどを開催してきた。同ワークショップには総務省統計局や内閣府、国土交通省も参加し、各府省との連携も進めてきた実績を持つ。
これらの一連の実績を踏まえて、2023年に一橋大学社会科学高等研究院(HIAS)に、総務省、内閣府をはじめとする府省や総務省統計研究研修所や統計数理研究所といった統計専門家が集まる機関などとも連携し、国際公的統計研究・研修センター(Hi-CEM)を設立した。同センターは、今までのネットワークを生かして、国内外の公的統計に関わる国際的な研究者との連携だけにとどまらず、国連やOECD、IMFなどとの連携も進めることで、アジアの公的統計の研究・研修の拠点としていくことを目指す。
